音楽詩劇研究所主催
国際交流基金 2024年度舞台芸術国際共同制作事業
黒潮プロジェクト 台湾─与那国─済州
黒潮に渦巻く記憶の反響──私たちが歌い継ぐ島々の声
第一部 「そして魂と踊れ」
済州島では、先祖の霊を道案内するために、神房(シャーマン)が竹で10個の門を作って「道」を作り、その道を案内する「シワンマジ儀式(シワンマジグット 시왕맞이굿=冥界の10人の王を迎える儀式)」が行われている。作曲家のチョン・ウォンキは、済州島の伝統芸能からインスピレーションを得て、この新作を作曲した。『そして魂と踊れ』はレクイエムであり、生と死、〈今、ここ〉の境界における生きた儀式である。この作品は、国境を越え、黒潮を渡り、今、ここにいる私たちに語りかけている。
チョン・ウォンキ 演出・作曲
済州島を拠点にフィールドワークを行い、歌を通して個人と共同体の生活の記憶をとらえる。人々の生活を包括する人類の遺産の価値に焦点を当てる中で、ディアスポラに関心を寄せてきた。『浄化×舞楽』『反響×拍子』『ポストメモリー』などミクストメディアによるシアターピースを発表。韓国の次世代の芸術の旗手として期待を集めており、2023・2024年の「済州4.3前夜祭」で音楽監督・作曲を担当したミュージカルは、済州4.3の人民蜂起の代表作として高い評価を受けた。現在は、在日コリアンの人生に深い関心を寄せ、朝鮮半島の分断の現実にも着目した新たな活動も展開するほか、オルタナティブロックバンドPUNK DAZEの活動でも注目されている。
第二部 ユーラシアンオペラ Op.4「黒潮の子」
2016年よりアジア・ヨーロッパ諸地域でコラボレーションを展開する音楽詩劇研究所の「ユーラシアンオペラ」。本作では、韓国の済州島、台湾原住民族、琉球(とくに日本最西端の与那国島)に焦点を当て、各地に出自を持つアーティストとともに創作を行う。歴史に翻弄され、消滅の危機にもある、島々の知られざる文化や固有の言語が歌となって響き合い、黒潮海流に浮上する。
それらの島嶼地域では、海難による漂着や外来者との交流など、大きな「歴史」の中で語りえなかったさまざまな「異聞」があるはずだ。異郷で「故郷」と対話を続けるディアスポラとの対話は、これまでのユーラシアンオペラ創作の中核をなすコンセプトであり、それは本作にも引き継がれている。
島々を越境するメインキャストは、与那国島出身の若手映画監督・俳優の東盛あいか。歌唱ソリストは、台湾のタイヤル族に出自を持つエリ・リャオと、済州島の歌手・俳優ムン・ソクポム。室内楽アンサンブルのほか、韓国からはカヤグム、伝統打楽器奏者、台湾からは中国笙奏者も参加する。
河崎純 演出・作曲・脚本・コントラバス
1975年生まれ。在学中よりベーシストとして活動を開始し、主に舞台作品の音楽監督、構成、委嘱作品の作曲を行う。演劇・ダンス・音楽劇、実験的なパフォーマンスを中心にこれまで110作以上の舞台作品の音楽監督、作曲、演奏を手掛けた。近年は特にドイツ、トルコ、ロシア方面での様々なプロジェクトに主要メンバーとして参加。2015年より音楽詩劇研究所主宰。2022年は著書『ユーラシアの歌―異郷と原郷の旅』(ぶなのもり)、韓国、ロシアの歌手を擁する二作の作曲作品CD「HOMELANDS」「STRANGELANDS」(Bishop Records)を発表。
© Alexander Danadoev
出演:東盛あいか(俳優) エリ・リャオ(歌手) ムン・ソクポム(済州島民謡)
山田有浩(舞踏) 三浦宏予(ダンス) 亞弥(舞踏) 吉松章(舞・謡)
坪井聡志(歌) 上田惠利加(コーラス)
演奏:チャン・ジェヒョ(打楽器) パク・スナ(伽耶琴) リ・リーチン(中国笙)
小沢あき(ギター) 河崎純(コントラバス) 任炅娥(チェロ) 荒井康太(打楽器)
今本晶子(フルート/沖縄公演) 金野紗綾香(フルート/東京公演)
映像・美術監督:三行英登 舞台美術:鄭梨愛 映像:高山剛
舞台監督:後藤恭徳[ニケステージワークス] 照明:宇野敦子
音響:増茂光夫[楽屋](東京公演) 我如古勝弥[LO.AD](沖縄公演)
スタッフ:憩居かなみ 韓国語指導:朴根鐘
記録写真(東京公演):mikomex
記録映像(東京公演):水内宏之[ (株) リムーブイメージ]
協力:てんぶす那覇 テンブスホール (一社) ステージサポート沖縄 佐喜眞美術館
楽道庵 Art Space Banjul 渡辺真也 翁長巳酉[PungaPonga] 佐藤純子
譜久嶺マリサ[与那国町教育委員会与那国町史編纂室] ジー・ミナ
主催:(一社) 音楽詩劇研究所
共催:(独) 国際交流基金
共同制作:(一社) 音楽詩劇研究所 (独) 国際交流基金
制作:(一社) 音楽詩劇研究所 斎藤朋[ (株) マルメロ]
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